オーディオ趣味の人々にとっては欠くべからざる「小物」、オーディオアクセサリー。その定義は専門家すら意見の分かれる線引きの難しい存在ですが、総じて再生音の改善を目指した魂の一品であることに間違いありません。
今回はあなたの音楽をより一層高めてくれる、これらオーディオアクセサリーについて解説します。
目次
真空管とは?
中身を真空にし、そこに電極を封入した中空の管を指します。電子管、あるいは熱電子管などの別名があります。
電極を流れる電子流を制御することで、増幅や検波などを行うことができます。オーディオ界では音声信号の制御・増幅に用いられています。
発明は1900年代で、とくに1960年代までラジオやオーディオなどに広く使われました。1970年代にトランジスタが大量生産に耐えうるようになり、真空管はその活躍を大幅に減らしました。しかし現代でも、この真空管を利用したアンプによる独特の音響は多くのファンを持ち、主にギタリストたちを虜にしています。真空管アンプが人を惹きつける原理については幾度となく考察が行われましたが、どれも諸説の一つの域を出ていない難しい世界でもあります。
電極が2つ封入してある2極管が基本構造で、電気の流れは一方通行です(整流作用)。2極管には増幅の作用は有していません。3極管は2つの電極間にもう一つの電極を割り込ませ、電子の流れをコントロールしたものです(一部電子が第3の電極によって反発する)。音響の増幅作用は、おもに3極管以上の構造が担っています。
ケーブルノイズキャンセラーとは?
環境騒音などのノイズを除き、該当音声を抽出するのに使われる機械です。抽出方法のひとつがスペクトル・サブトラクト法(略称SS法)です。
SS法は、まずノイズの推定を行います。ノイズは大きさが様々で、該当の音楽に比べて音のつながりが安定しておらず、多彩な周波数成分の音を含んでいます。この違いを利用し、ノイズを推定します。次に、ノイズを周波数ごとに分け(フーリエ変換)、打ち消す信号を求め(逆フーリエ変換)、音波として発することで、音を聞こえなくできるという仕組みになっています。補聴器・録音機器・音声認識サービス・電話などに使われています。
インシュレーターとは?
音波の発生で生じる揺れを、他の機器に影響を及ぼさないようにする防振材を指します。
大きく分けると「振動を吸収するなどして減らすもの」と「違う周波数の発生源を含ませて打ち消し合うもの」があります。前者は軟質ゴムやバネなどが使われ、後者は金属・ガラス・木・セラミックなどが使われます。
特にレコードプレーヤーに対しては、ハウリング(起こった振動を機器が感知し、全く別の電気信号となって機器から発音する現象)を防ぐことができるとして重宝されています。狭い意味では、オーディオ機材を面で支えるものは「オーディオボード」と呼ばれ、区別される場合があります。なお、振動込みでいい音を出すように設計されたスピーカーなどもあるので、効果を削がないよう注意が必要です。
電源フレッシャーとは?
ノイズ軽減アイテムのひとつで、電化製品に静かに働いてもらうことを目的とした製品です。
力率の低下を改善するもので、電位と電圧の位相の乱れを治すことからアプローチしています。家電製品の本来の設計どおりの性能が発揮され、働きが増すという側面もあります。
オーディオアクセサリーメーカーとして有名な「Aitec」がほぼ一手に製造しており、税込7万2000円となっています。
ノイズキャンセラーボードとは?
前述のオーディオボードと似たコンセプトの製品ですが、こちらの目的は電磁波のシャットアウトです。
3種類から構成されるメタルボードに高い制振性を含ませ、オーディオ機器への影響(スピーカーの音圧・周囲からの振動など)を軽減しています。ボード表面は炭素繊維をベースとして作られ、カーボンマイクロコイル(CMC)やフェライト等を混合し、コーティングしたものです。電磁波を広範囲に吸収し、ノイズを軽減する仕組みとなっています。
株式会社キソアコースティックのブランド「Shizuka」が主に製造しており、12万円からの販売となっています。
スタピライザーとは?
安定化装置を指す言葉で、オーディオ界ではアナログレコードの用語として使われています。レコード溝から音を拾う際、レコード針がぶれて余計な音を生じないようにするのが役割です。
原理はレコード針をある程度の重さで押さえつけ、溝に密着させるという物理的なもの。多くのメーカーから発売されている、人気の根強い商品です。求める音質によって選ぶスタビライザーが異なるため、一律に重ければ効果がある訳ではありません。
また、重すぎるとターンテーブルが摩耗してしまうので、回転軸やモーターなどへの負担も留意する必要がありそうです。
ルームチューニングとは?
部屋を音楽鑑賞に適する環境に整えることを指します。先述のノイズキャンセラーボードやインシュレーターの用途がこれにあたります。
とにかく余計な音を排除することとも捉えがちですが、吸音材を敷き詰めれば大丈夫かといえば、一律にそうとは言えません。先に述べた通り、残響もひとつの音楽として設計されているようなスピーカーだってあるからです。とくに低音の響きは嫌な残響感となって残りやすいので(ブーミング帯域、125Hz~250Hz)、それらの残響時間を主な音域の残響時間より短くすることが重要になってきます。
また、強度の低い材質(ダンボールなど)を吸音材に使うことは、反響時に材質自身の濁った音が出てしまうため、音楽鑑賞には不向きです。
コンサートホールの設計はこのルームチューニングの要素がふんだんに取り入れられ、音楽を楽しむうえでより適した構造になっています。日本の音響工学にもとづいたホールも自宅より良質な音楽が楽しめますが、それに経験と勘がプラスされた海外のホールはよりグレードの高い音楽を耳にできるそうです。
チャンネルディバイダーとは?
その名の通り、「チャンネルをdevide(分割)する機材」を指し、スピーカーシステムの構築に役割を果たします。
ここでのチャンネルは音域のことで、高音と低音で出力するスピーカーを分けたりします(マルチウェイシステム)。3ウェイシステムといった場合は、3つのスピーカーに音を割り振る構成のことで、分岐点となる周波数をクロスオーバー周波数と言います。
チャンネルディバイダーのおかげで、複数のスピーカーを効率的に鳴らすことができているという訳です。
ちなみに、このディバイダーが必要ない、全部の音域が一つの機器で鳴らせるスピーカーのシステムをフルレンジシステムといいます。音を追求する上では、マルチウェイシステムを用いてこのディバイダーを活用することで、より音質を良くできるという訳です。
オーディオアクセサリー まとめ
明瞭ばかりが音楽じゃない、清澄ばかりがオーディオじゃない。突き詰めれば奥深く、そして面白いオーディオの世界。それはアクセサリーにも如実に現れています。
扱いこそ「小物」でありながら、オーディオ趣味の人々にとっては十分な威力を発揮するマストアイテム・オーディオ・アクセサリー。
より本来の魅力を引き出した音楽の世界、いちど覗いてみるのもいかがでしょうか